猫の肝臓炎症（肝炎）ってどんな病気？答えは、肝臓や胆管に炎症が起こる深刻な病気です。特にCCHS（胆管肝炎症候群）と呼ばれる状態は、猫によく見られる肝臓トラブルの一つ。私たち獣医師の現場では、嘔吐や食欲不振で来院する猫の検査をすると、実は肝臓に問題があったというケースが少なくありません。あなたの愛猫が最近「元気がない」「吐く回数が増えた」と感じたら、要注意です。この記事では、猫の肝臓炎症の見分け方から治療法まで、飼い主さんが知っておくべき情報をわかりやすく解説します。早期発見のポイントや自宅でできるケア方法も紹介するので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
E.g. ：猫のノミ・ダニ対策で知っておくべき7つのポイント【完全ガイド】
- 1、猫の肝臓炎症（肝炎）ってどんな病気？
- 2、猫の肝臓炎症の原因は？
- 3、見逃さないで！肝臓炎症のサイン
- 4、動物病院での診断方法
- 5、治療法と回復までの道のり
- 6、自宅でできるケアのコツ
- 7、予防のためにできること
- 8、Q&A よくある疑問
- 9、猫の肝臓炎症の意外な関連症状
- 10、意外な予防法と日常ケア
- 11、治療中の意外な落とし穴
- 12、肝臓に優しい食材あれこれ
- 13、シニア猫の肝臓ケア特別編
- 14、肝臓数値が気になる猫のための生活改善プラン
- 15、猫の肝臓を守る最新情報
- 16、FAQs
猫の肝臓炎症（肝炎）ってどんな病気？
肝臓の役割と炎症のメカニズム
あなたの愛猫が最近元気がない？もしかしたら肝臓に問題があるかもしれません。猫の肝臓は、毒素の排出からタンパク質の合成まで、実に多くの重要な仕事を担っています。
特に胆汁の生成は消化に欠かせない機能で、肝臓で作られた胆汁は胆嚢に貯蔵され、必要に応じて胆管を通って腸に送られます。この流れが滞ると、脂肪の消化がうまくいかなくなるんです。
複雑な炎症の種類
「肝炎」「胆管炎」「胆管肝炎」...専門用語が多くて混乱しますよね？実はこれらは密接に関連した症状で、まとめてCCHS（胆管肝炎症候群）と呼ばれることが多いんです。
猫の場合、肝臓だけが炎症を起こすより、胆嚢や胆管も同時に炎症を起こすケースが多く見られます。これが長引くと、脂肪肝症候群というさらに深刻な状態に進行する可能性があるので要注意です。
猫の肝臓炎症の原因は？
Photos provided by pixabay
細菌感染と免疫システム
「どうしてうちの子が？」と心配になりますよね。CCHSの原因として最も多いのは細菌感染ですが、実はまだ完全に解明されていない部分も多いんです。
例えば、胆嚢結石が胆汁の流れを妨げたり、膵炎や炎症性腸疾患などの他の病気がきっかけになることも。免疫システムが過敏に反応してしまう体質の猫もいます。
リスク要因の比較
| 原因 | 発生頻度 | 予防可能性 |
|---|---|---|
| 細菌感染 | 高い | 中 |
| 胆嚢結石 | 中 | 低 |
| 免疫異常 | 低 | 低 |
見逃さないで！肝臓炎症のサイン
わかりやすい症状
「最近吐く回数が増えた」「ご飯を残すようになった」こんな変化に気づいたら要注意です。嘔吐や食欲不振は肝臓炎症の代表的なサイン。
もっとわかりやすいのは、白目や歯茎が黄色くなる黄疸。これは「うちの子、イエローカードもらったみたい」と冗談を言っている場合じゃありません。すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
Photos provided by pixabay
細菌感染と免疫システム
「ただの老化だと思ってた...」と後悔する前に。体重減少や元気がないといった症状も見逃せません。お腹を触られるのを嫌がる場合は、内臓に痛みがある可能性が。
面白いことに、中には食欲が増す猫もいます。「よく食べるから健康だと思ってた」という落とし穴もあるんです。
動物病院での診断方法
最初のステップ
「いきなり高額な検査をするの？」と心配になるかもしれませんが、まずは基本的な身体検査から始まります。血液検査で肝臓の数値をチェックし、超音波検査で臓器の状態を確認します。
うちの病院では、飼い主さんに「前日の夜から絶食させてきてください」とお願いすることが多いですね。空腹状態の方が検査がしやすいんです。
詳しい検査が必要な場合
「なぜそんなにたくさん検査するの？」と疑問に思うかもしれません。実はCCHSは単独で起こることもあれば、膵炎や腸の炎症と同時に発生することも多いからなんです。
重症例では、手術で組織を採取することもあります。でもご安心を。最近は超音波ガイド下で針を刺す吸引検査が主流で、全身麻酔が必要ないケースも増えています。
治療法と回復までの道のり
Photos provided by pixabay
細菌感染と免疫システム
点滴と抗生物質が治療の基本です。「3ヶ月も薬を飲ませるの？」と驚かれるかもしれませんが、肝臓の炎症は再発しやすいので、しっかり治すことが大切なんです。
食欲がない子には、一時的にチューブ給餌が必要になることも。うちの患者さんで「鼻からチューブが出てる姿がかわいそう」と泣かれる飼い主さんもいますが、命を救うための大切な処置です。
回復までの期間
早期発見なら数日で改善することも。でも脂肪肝まで進行していると、回復に数ヶ月かかることもあります。「焦らずゆっくり」が肝臓治療の鉄則です。
投薬は長期間必要ですが、デナマリンやウルソといった肝臓サプリメントが効果的なケースも多いです。定期的な血液検査で経過を見ながら、少しずつ薬を減らしていきます。
自宅でできるケアのコツ
食事管理
肝臓に優しい特別食に切り替えるのがベスト。でも「急にフードを変えると食べなくなる」という猫も多いですよね。そんな時は、いつものフードに肝臓サポート用のトッピングを混ぜるのも一案です。
1回の量を減らして回数を増やすと、消化の負担が軽くなります。「1日2回」から「4-5回」に分けるだけで、嘔吐が減ることもありますよ。
環境整備
ストレスは肝臓の大敵！静かで落ち着ける場所を確保してあげましょう。多頭飼いの場合は、食事場所を分けるなどの配慮も必要です。
「病院が苦手な子」には、キャリカーに慣れさせる練習から始めるのがおすすめ。定期的な通院が必要になるので、ストレスを減らす工夫が大切です。
予防のためにできること
定期健診の重要性
「元気そうだから大丈夫」と思わずに、年に1-2回は血液検査を受けましょう。7歳以上のシニア猫なら、半年に1回が理想的です。
うちの病院では「誕生日月に健康診断」を推奨しています。覚えやすいですし、愛猫の長寿を願う記念日にもなりますよね。
日常的な観察
毎日のトイレ掃除で便の状態をチェック。水を飲む量や毛艶の変化も重要なサインです。「いつもと違う」に気づけるのが、最高の予防医学です。
肝臓数値が気になる猫には、ミルクシスルというハーブが含まれたサプリメントもおすすめ。ただし、必ず獣医師に相談してから与えてくださいね。
Q&A よくある疑問
人間の肝臓薬は使える？
「私が飲んでるウルソを分けてあげたら？」という質問をよく受けます。実は人間用と動物用では成分濃度が違うので、絶対にやめてください。猫用の適切な処方薬があります。
自然治癒は可能？
「放っておいたら治る？」残念ながら、肝臓炎症は自然に良くなることはほとんどありません。早期治療が何よりも大切。気になる症状があれば、すぐに専門家に相談しましょう。
最後に、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど症状が出にくい器官です。愛猫の小さな変化を見逃さないことが、健康長寿の秘訣ですよ！
猫の肝臓炎症の意外な関連症状
皮膚や被毛の変化
「毛艶が悪くなっただけだと思ってた...」実はこれ、肝臓の不調のサインかも。肝臓がうまく働かないと、タンパク質の合成が阻害され、被毛の質が低下するんです。
うちの患者さんで、背中の毛がパサパサになった猫がいました。飼い主さんは「冬の乾燥かな」と思っていたそうですが、血液検査で肝臓数値がかなり悪かったんです。肝臓治療を始めて2ヶ月後、見違えるように毛艶が戻りましたよ！
行動の微妙な変化
夜中に妙に元気になったり、逆に昼間もずっと寝ていたり...こんな変化も要注意です。肝臓が悪いと、アンモニアなどの毒素が脳に影響を与えることがあるんです。
「最近、壁をじっと見つめてるのが増えた」という訴えで来院した猫が、実は肝性脳症の初期だったケースもあります。ちょっとした行動の変化も見逃さないでくださいね。
意外な予防法と日常ケア
歯の健康が肝臓を守る
「歯周病と肝臓が関係あるの？」と驚かれるかもしれません。実は口の中の細菌が血流に乗って肝臓に到達し、炎症を引き起こすことがあるんです。
毎日の歯磨きが理想ですが、難しいなら歯磨きガムやデンタルケア用のおもちゃを使うのも◎。うちでは「週に3回は歯磨き」を目標にしてもらってます。肝臓だけでなく、腎臓の健康にもつながりますよ！
適度な運動のススメ
「猫って寝てばかりでしょ？」と思いがちですが、適度な運動は肝臓の血流を改善します。10分間の遊びを1日2回するだけで、代謝がぐんと良くなるんです。
おすすめは、猫じゃらしで上下運動をさせること。ジャンプすると内臓も適度に動きますし、肥満予防にもなります。ただし、肝臓が悪い時は無理させないでくださいね。
治療中の意外な落とし穴
薬の飲ませ方のコツ
「薬を吐き出しちゃうんです」という悩み、よく聞きます。実は食後30分くらいに与えると、吐きにくくなるんです。胃の中に少し食べ物がある状態がベスト。
どうしても飲まない時は、獣医師に相談して錠剤を粉砕したり、液体薬に変更することも可能です。うちの患者さんで、チキン味の液体薬に変えたら喜んで飲むようになった猫もいますよ！
水分補給の重要性
「水飲み場を増やしたら検査数値が改善した」というケースが実際にあります。肝臓が悪いと脱水になりやすく、それがさらに肝臓に負担をかける悪循環に。
おすすめは、家のあちこちに水飲み場を設置すること。特に、猫がよく通る場所に置くと効果的です。うちでは最低3ヶ所、できれば5ヶ所の水飲み場を作るようアドバイスしてます。
肝臓に優しい食材あれこれ
手作りごはんのポイント
「鶏ささみなら大丈夫？」実は、高タンパク低脂肪の食材が肝臓には優しいんです。ささみの他にも、白身魚や豆腐などがおすすめ。
ただし、手作り食だけだと栄養が偏りがち。必ず獣医師に相談して、必要なサプリメントを追加してください。うちの病院では、手作り食派の飼い主さん向けに、簡単レシピも配布してますよ！
おやつの選び方
「どうしてもおやつをあげたい」時は、肝臓サポート成分入りのものを選びましょう。最近は、ミルクシスルエキス入りの猫用クッキーも売られています。
量の目安は1日10kcalまで。人間用の煮干しは塩分が高いのでNGです。どうしてもというなら、無塩の猫用煮干しを少量にしましょう。
シニア猫の肝臓ケア特別編
定期的な血液検査のススメ
「7歳を過ぎたら」半年に1回の血液検査が理想的。肝臓の数値は急に悪化することが多いので、早期発見が何よりも大切です。
うちの病院では、シニア猫専用の健康チェックコースを設けています。血液検査の他に、尿検査と血圧測定もセットで、割引価格で受けられるんです。愛猫の長寿のために、ぜひ活用してくださいね。
環境調整のコツ
「階段の上り下りが減った」と感じたら、生活スペースを1階にまとめるのも一案。肝臓が悪いと疲れやすくなりますので、移動の負担を減らしてあげましょう。
トイレも複数設置すると良いですよ。我慢すると脱水になり、肝臓にさらに負担がかかります。特に多頭飼いの場合は、猫の数＋1個のトイレが理想です。
肝臓数値が気になる猫のための生活改善プラン
1週間チャレンジ
「何から始めればいいかわからない」という方へ。まずは1週間、次の3つを試してみてください：
- 水飲み場を3ヶ所に増やす
- 1日10分×2回の遊び時間を作る
- 夜更かしせず、規則正しい生活リズムを
たったこれだけで、肝臓の数値が改善したケースもあります。小さな積み重ねが、大きな変化につながりますよ！
ストレス管理の重要性
「引っ越し後に数値が悪化した」という話、よく聞きます。猫は環境変化に敏感で、ストレスが肝臓に直撃するんです。
新しい家具を増やす時も、いきなり全部変えずに少しずつ。フェロモンスプレーを使うのもおすすめです。うちの患者さんで、引っ越しの1週間前からフェロモンを使い始めたら、全くストレス反応が出なかった猫もいました。
猫の肝臓を守る最新情報
サプリメントの進化
「サプリって本当に効くの？」と疑問に思うかもしれません。最近は、SAMe（サミー）という成分が肝細胞の再生を助けることがわかってきました。
ただし、品質にばらつきがあるので、獣医師推奨のものを選んでください。安価なサプリの中には、効果が疑わしいものもあるんです。うちの病院では、臨床試験データのある信頼できる製品だけを紹介しています。
検査技術の進歩
「血液検査だけでわかること」が増えています。従来のALTやALPだけでなく、SDMAという新しいマーカーで、より早期の肝障害を検出できるようになりました。
超音波検査も進化していて、5年前と比べてずっと詳細な画像が得られます。検査が苦手な猫のためには、鎮静剤を使わずに済む最新機器を導入している病院も増えていますよ。
E.g. ：猫の急性肝炎の症状と原因、治療法について | ペット保険のPS保険
FAQs
Q: 猫の肝臓炎症で最も危険な症状は？
A: 最も危険なサインは黄疸です。白目や歯茎が黄色くなるこの症状は、肝臓が深刻なダメージを受けている証拠。私たち獣医師が見逃さないようにしているのは、食欲不振が3日以上続く場合と繰り返す嘔吐です。特にシニア猫の場合、ただの老化と勘違いしがちなので要注意。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど症状が出にくいため、日頃から愛猫の小さな変化に気づけることが大切です。もしこれらの症状が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
Q: 猫の肝臓炎症の治療費はどれくらい？
A: 初期治療で約3-5万円、重症例だと10万円以上かかることも。私たちの病院では、まず血液検査（1-2万円）と超音波検査（2-3万円）を行います。入院が必要な場合、1日1-2万円の費用がかかります。ただし早期発見なら通院治療も可能で、費用を抑えられます。長期の投薬治療では、月々5,000-1万円程度の薬代がかかりますが、ペット保険が適用できるケースも多いです。高額になりがちな治療費を心配する前に、定期健診で早期発見を心がけましょう。
Q: 肝臓に良い猫の食事は？
A: 低脂肪で高品質なタンパク質を含む療法食が最適です。私たちが特におすすめするのは、肝臓サポート用の処方食。ただし「急にフードを変えると食べなくなる」猫も多いので、7-10日かけて少しずつ切り替えるのがコツです。自宅でできる工夫として、1回の量を減らして4-5回に分けて与えると、肝臓への負担が軽減されます。市販のフードを使う場合は、獣医師に成分を確認してもらうと安心です。また、ミルクシスルというハーブが入ったサプリメントも肝機能サポートに効果的です。
Q: 猫の肝臓炎症は完治する？
A: 早期発見なら完治可能なケースもあります！特に細菌感染が原因の場合、適切な抗生物質治療で完全に回復することも。私たちの臨床経験では、3ヶ月以上の投薬治療が必要なケースが多いですが、きちんと管理すれば普通の生活を送れる猫がほとんどです。ただし、慢性化したり脂肪肝を併発した場合は、長期の管理が必要になります。定期的な血液検査を受けながら、愛猫に合った治療計画を立てることが大切です。
Q: 肝臓炎症の猫に絶対やってはいけないことは？
A: 最も危険なのは人間用の薬を与えること！「私の肝臓薬を分けてあげよう」は絶対にNGです。また、絶食させすぎるのも危険で、24時間以上食べないと脂肪肝のリスクが高まります。私たちが特に注意を呼びかけているのは、市販のサプリメントの安易な使用。猫の肝臓は人間と代謝が違うため、かえって悪化させる可能性があります。何か気になることがあれば、必ず獣医師に相談するようにしてくださいね。
著者について
